2017年5月8日月曜日

錯誤と停滞

 ロシア革命はケレンスキーが最終的に率いる事となった勢力が長年の苦闘の末にこぎつけた成果だった。多数派を名乗った少数派(つまりボルシェビキ)は列車強盗といった犯罪をやっていただけだった。
 その少数派の頭目レーニンは職業売国奴で、誰にでもロシアを売り、金にしようとした。それで日露戦争の時、日本はレーニンに金をくれてやった。
 革命が起きると、レーニンは反革命を宣言し、ドイツから資金をもらってロシア入りした。ドイツは第一次大戦でフランスとロシアを相手に二面作戦を展開しており、ロシアに手を引かせ、西部戦線に専念したかったのだ。
 ロシアに乗り込んだレーニンは、与太者を金で雇い、サンクトペテルブルクを拠点に革命派に襲いかかった。この暴力革命は成功し、ボルシェビキ派はロシア革命の横取りに成功した。
 レーニンはドイツのために「反戦」を唱えて戦争から手を引き、ドイツは西部戦線に集中した。

 ロシア共産党(ボルシェビキ)はこうして政権を取った。その後に続く惨状は気持ちが暗くなるので割愛する。興味のある方は「共産主義黒書」などをどうぞ。

 ロシア共産党は各国の共産党を指導する事となった。ロシア方式という成功体験が金科玉条とされた。

 スペインではアナーキストが主導した勢力が政権を取ったが、フランコ将軍が自軍を率いて内乱を開始した。共産党は権力を奪うためにアナーキストに襲いかかり、みんな死刑にしてしまった。戦線はズタズタになり、フランコは勝利した。共産党が勝利したら、スペイン人は情熱的にスペインをキリングフィールドにしただろうから、それよりはフランコの方が良かった可能性が高い。
 ともかく、スペインでは共産党による横取りは失敗した。

 支那では、国民党が清を倒し、漢民族の国家を樹立したが、紆余曲折があり、中共が日本軍を戦争に引きずり込む謀略もあり、日本軍も好戦的だったので日中戦争となってしまった。
 共産軍は弱体で逃げてばかりいたが、蒋介石は馬鹿だったのか、国共合作で共産党と共同戦線を張ってしまった。しかし、日本軍と戦うのは国民党ばかりで、共産党は国民党軍を後ろから攻撃していた。結局、国共合作は破綻するが、蒋介石は何を考えていたのか、二度も同じ轍を踏んだ。
 アメリカがうかうかしていた事や、共産主義勢力がアメリカに浸透していた事など、色々あったのだろう、ロシアを背景にした共産党軍は、大戦後、国共内戦で勝利してしまい、支那を支配する事となった。
 清の打倒には無関係で、日本軍とも戦わずにいた毛沢東の中共だが、支那の横取りには成功した。

 共産主義者は「革命」などと口にするが、それは自己申告にすぎない。マルクス主義はただの一度も自力で革命に成功した試しはない。だから、共産主義革命を恐れる人はまったくの過大評価をしているだけだ。彼らは、人が成し遂げようとしている革命を横取りし、薄汚く貶めるだけだ。
 もし革命を恐れるなら、理想を持ち、地道に努力し、人望がある、本当の(つまり、共産主義者ではない)革命家を恐れるべきだ。
 でも、本当はそんな必要もない。ロシア革命によって共産党が革命の家元となってしまったため、本物の革命家は共産党によって異端とされ、排除されるのでいなくなってしまった。
 共産党は、こうして横取りが出来なくなった。
 ロシアを始めとして共産党が権力を取った国々は不幸にしかならなかったし、経済的に行き詰ってしまい、崩壊して行った。
 支那はアメリカのおかげで中共は崩壊せず、一党独裁を続けているが、漏れ伝わる内容が悪すぎて、とても評価は出来ない状態のようだ。

 マルクス主義は失敗した。革命思想として、横取りは出来るが、革命は出来ないのだから無価値だ。これはレーニンが悪いのだと言いたがる人がいるかもしれないが、レーニンがいなければロシア革命すらなかっただろう。
 社会建設の理論としても、現実を見ればはっきりと無残な失敗しかない。
 ロシア人が馬鹿ばかりそろっていたから、マルクス思想が理解できなかったと言いたい人がいるかもしれないが、無根拠の見本になるからよした方がいい。

 マルクス主義は馬鹿馬鹿しいから、もう省みる必要がない。まったく気にしなくていい。私たちの歴史がやっとの思いでその現実認識にたどり着いたのがつい最近だ。
 この事の意味をきちんと整理した人はいない。ある人は苦い思いで、別の人は安堵して、その時をやり過ごしただけだ。だから、何かあると、ズルズルと過去に戻ってしまう人々が出て来る。
 ショックから立ち直れないのだろう。古い言い方をすれば「革命ボケ」だ。「進歩ボケ」でもあるかもしれない。「革命」や「進歩」だと思っていたものが、まったくの偽物だった事をどこにも持っていけなくなっているのだ。 
 つまり、そんなのを信奉して「知識人」のつもりでいたら、全くの馬鹿だった事を処理しきれなくなってしまったのだ。ま、廃人だわな。
 20世紀という、それ以前と比べると格段につまらない時代の錯誤を整理し、つまらない時代であっても、取り柄はあるという事を取り出す人はそのうち出て来るだろう。通り一遍の頭では出来ない事だから大変だろうが、いつまでもここが止まっているのは良くない。
 そう、停滞は良くない。