2017年7月29日土曜日

そして、今は

 ジョージ・ケナンは、アメリカは大戦前にロシア、ドイツ、日本のどこかと組んで他の国と戦うしかなかったと書いている。そして、ロシアと手を組んだ。
 ドイツは英国が敵としていた国で、元々英国の地政学は、ドイツと戦うための学問だったというぐらい、警戒していた。
 また、ドイツはロシアとの結びつきが深く、ナチスドイツ時代のドイツ軍は、ソビエト領内で秘密裏に軍事訓練をしていたし、ソビエト軍の訓練を行っていたのはドイツ軍だった。アメリカは、ドイツとソビエト・ロシアを引き離したかっただろう。
 日本と手を組めば、支那の大部分、満州、朝鮮半島、台湾、ロシアの東側が日本の領土になるか、もしくは影響力の範囲内となってしまう。これも好ましくなかっただろう。
 当時、アメリカにはソビエト以外の選択肢はなかった。ドイツと引き離せば、ソビエト・ロシアはさほど力のある国家ではなかったからだ。そして、ルーズベルトはアメリカ内の秘密共産党の活動を見ないフリをする事で、スターリンと意志を通じた。
 スターリンはソビエト単独では日本に勝てないと考えたのだろう(とても冷静だ)、アメリカと日本を戦わせるべく、アメリカの秘密共産党に工作を行わせた。
 アメリカは外交で日本を追い詰め、日本は開戦した。アメリカは、ヨーロッパでドイツと、アジア・太平洋で日本と戦い勝利した。ケタ違いの力量だった。

 降伏した部隊を皆殺しにしたり、本土爆撃で非戦闘員を大量虐殺するなど、国際法を破る汚い戦争を行ったが、それでも、あの時点でのドイツと日本に対して同時二面作戦を決行し、打ち負かした力の大きさは凄まじいものだった。
 しかし、この力を存分に発揮できたのは朝鮮戦争までで、ベトナムから後は国内の反対派のせいなのか、抑制的にしか戦わなくなり、思うような戦果を上げられていないように見える(それに比べてソビエトも、今のロシアも、遠慮など知らないからやりたい放題だ)。これはベトナム戦争時のソビエトの対米工作が大成功し、盛り上がった反戦運動の参加者が社会の様々な場所にいたためだろう。彼らが引退し、ソビエトによる工作の洗脳を受けていない世代が主流となれば、アメリカは再び戦えるようになる。

 ドイツはエネルギーでロシアと密接な関係を持ち、輸出入と金融で支那との関係を深めている。第三帝国の地図がEUとなって実現したと言うと、あまりに意地が悪いが、こんな悪意のある事を言う者は世界中に沢山いる。でも、賢明なメルケルは、思い上がった気違いのアドルフ軍曹が、かつて持っていたよりも、はるかに大きな権力を運営している。つまり、ケタが違う(ヒトラーは右翼の理想を追求し、メルケルはリベラルな理想を追求しているという違いはあるが、政治的リソースを理想のために無駄遣いしている点だけ同じだ。そこが解除されるとドイツも一皮むけ、もう少し嫌われなくなるだろうにそうはならない。本当はそこが惜しいのだが、ケチと理想主義は残念ながらドイツ人の国民性なのだろう)。
 EUの盟主たるドイツの力は非常に大きなものだが、EUにかつての帝国が顔を揃えているため、EUが全面的に世界の平和維持を行うには問題がある。つまり、世界を台無しにした者たちに出来る事は少ししかない。
 つまり、メルケルに出来る事は、EUを抑える事だけになる。その役目を果たせる指導者は、世界に何人もいないだろう。メルケルはとても良くやっている。
 EUは身動きがとれなくなっているが、その大きさに比例して問題も大きい。だが、苦しみや犠牲、困難は政治的な正しさから見れば些事にすぎないのだろう。
 EUを通じて、ヨーロッパは中世に戻ろうとしているのかもしれないと、知人と話し合った事がある。旅行帰りの知人と東欧の話をしていた時だったと思う。

 そして、日本だが、さて、どうしようか・・・