2017年7月8日土曜日

分配と総取り 権力の吐息 2

 トランプ大統領を批判するのは、評論であり、政治的行為ではない。政治的行為というのは、相手が誰であろうと交渉し、自分が代表する側(つまり、代表する利害)に少しでも有利な方向に持って行く事だ。トップに立った側が他の利害関係を無視して総取りをしてしまうような事は、狭い範囲ではありえるかもしれないが、先進国の国家規模ではありえない。そんな事をすれば社会が不安定になり、トップの側の利益も損なわれるからだ。
 交渉には相手を尊重する事が必須だ。もちろん信頼も不可欠だ。信頼と尊重を損なう批判など無益だ。そんな事をしている時間もない。あるとすれば、政治行為をしているのではない。
 これが基本だが、相手を力で押さえつけねばならない場合は、交渉の余地はないという事を示すために批判が行われる。もちろん、力を行使している間に、裏で交渉を行う事はよくある。

 元々不安定で、不安定である事から利益を引き出しあっている地域では、利益を総取りにすべく敵を皆殺しにする。その利害とは、ひとつの、あるいはいくつかの部族の利害であり、他の部族を殲滅する事が利益になると信じられている。
 共産主義の一党独裁というのもこれと同じで、他の党派、政治潮流を「反革命」として断罪し、存在を許さない。こうして共産党が利益を総取りし、独占する。彼らエリートの腐敗は、様々に語られて来たから繰り返さないが、共産党幹部や政府官僚など、エリートは腐敗しきっていた。これはロシアに限らず、東欧圏、支那、キューバ、ベトナム、北朝鮮も同じだ。野蛮丸出しだ。
 マルクスが「原始共産制」と読んだのは(エンゲルスだっけ? 宇野弘蔵じゃないよな)、こういう事ではないと思うが、読んでいないので知らない。もちろん、読む必要も、知る必要もない。

 共産主義は共産党が代表する利害以外は退けるので尊重も交渉も信頼もない。効率的なようだが、すぐに停滞する。無残な失敗が累積していたが、世界中の共産主義者、進歩派リベラルが失敗を隠蔽し、嘘を喧伝した。彼らはそれが良心的行為だと思い込めたからだ。良心というのは、時々、こうした暴走をする。良心が理性や知性よりも感情を優先する。理性や知性は、感情に負ける事が多い。
 良心をこのように発動させたタタリは理性、知性の劣化として現れる。多くの知識人が歪んだ良心のせいで知性を劣化させ、残骸として生きている。反原発だとか、脱原発だとか言って復興の脚を引っ張っている知識人たち、頓珍漢な護憲憲法学者たちは知識人の残骸でしかない。無用だからとっとと廃棄した方がいいが、廃棄場がない。

 日本の国会では、幼稚な野党が、幼稚なマスコミの筋の悪い騒ぎを国会に持ち込んで、立法機能を麻痺させようとしたが、無理だった。当然だ。
 立法府に議員となって奉職しておきながら、機能麻痺を目論むというのは破壊工作だ。そんな事をするのは、潜入工作員も同然だ。ただ、あまりにも能力が低いので雇ってもらえないだろうけどね。

 互いを尊重しあいながら、対立や違いを、できるだけ現在を反映した政策に落とし込む努力が大切なのに、感情や予断に左右され、言葉尻や重箱の隅ばかり突いているようでは、あまりに馬鹿馬鹿しいから、さっさと多数決で決めてもらった方がいいと思えて来る。バカバカしさの原因は野党にある。
 多数が少数の意見を尊重しようとしている時に、少数は多数の意見など無視している。これは歪んでいるし、おかしい。野党の人たち、気がついて・・・無理か。
 こんな事をしていると、野党は日本共産党のフロントにしか見えなくなる。本当にそうなのかな?

権力は、法律、規則、手順で縛られているし、それは極限化する。超越性などどこにもなくなって行く。権力はきらびやかな宮殿ではなく、殺風景な事務所で運営されるものとなった。征服者から事務屋の手に渡り、絶対的で絶大なものから、相対的で小さなものとなる。
 色々な人の間で、権力観がズレている。その権力観のズレが、時に歪みを生み出すのはしかたのない事だ。その歪みが政治を後退させる事もある。それは、歪みを正すために後退が必要だっただけだ(都民ファーストの話だけど、間違った権力観を体現している毒吹き女の事なんか、わざわざこれ以上は言わない)。

 権力の超越性の度合いを大きさとしてとらえると、時間とともに権力は小さなものとなる。QHGよりも、今の政府の権力の方が小さいのは、日本が属国だからではなく、権力が小さくなったからにすぎない。
 権力の大きさを固定しておいて考察するのは、簡単のためにはなるかもしれないが、特殊な操作をしている事を忘れてはいけない。また、高度な考察は出来ないので、予備的な考察に留めるべきだろう。

 ISISやタリバンの指導者の方が、アメリカ大統領よりも大きな権力を持っている。また、ロシア大統領や、支那の首席、北朝鮮の最高指導者の方が大きな権力を持っている。この大きさとは、それが影響力を持つ範囲内での絶対性、超越性の事で、それは同時に閉鎖性でもある。
 アメリカ大統領は大きな影響力を持っているが、閉鎖性はより少なく、絶対性、超越性はかなり卒業出来ている。
 この大きさを、総取りのパーセンテージで数値化できる。小さなパイでも全部取れば権力としては大きい。大きなパイであっても、いくつかに別けると権力は小さくなるという風に考えられるかもしれない。

 この事は人類にとって、とても大きく、重要な意味を持っている。