子供の頃、銭湯で知らない子たちが隣になった。お姉さんと弟らしい二人だった。
あの頃の銭湯には子供だけ性別がなく入っていた。父親の子供連れだと、女の子でも男湯に入っていたし、女親と一緒だと男の子でも女湯に入った。小学生ぐらいまではそういう感じだったと思う。
銭湯での事などどうして覚えているのかというと、その子たちが頭を洗った時、泡が灰色になったからだ。とても汚れていたのだろう。
その灰色のシャンプーの泡を見て、私は
「カッケーッ!」
と思った。それで印象に残っている。
この感覚は、おそらく女性の共感を得る事はないだろうし、男でも裏切り者がいると思われるところだ。しかし、たとえ少数であっても賛同を期待できると信じる。
後に肉体労働をして、土埃で体が汚れた時、頭を洗ったら、泡が灰色になった。その時、ついに俺もやったぜと嬉しくなった。小学生の時の事を、二十歳代まで引きずった事になる。