2022年1月18日火曜日

プーチンをおさらいしてみる

ウクライナなど、この所の情勢の動きを見ながら、少しロシアについて整理しておきたい。

ソ連の崩壊は、KGBが極秘に計画・実行した作戦だった。共産党があまりに強欲で権力を私物化し、怠惰で無能であるのに愛想を尽かしたのかもしれない。KGBは秘密警察であり諜報機関でもあった巨大機関でロシア軍よりも大きな権限を持っていた。

ソ連崩壊の引き金を引いたゴルバチョフは、KGB局員だったという。

ゴルバチョフは不可解なクーデタで失脚したが、エリツィンによってクーデタ部隊はすぐに鎮圧された。クーデタを起こしたロシア軍の司令官たちは、何が起こったのかわからないまま逮捕され、姿を消した。どう見ても彼らはクーデタの首謀者ではなかった。

このクーデタ騒ぎで、ソ連時代の機密文書が大量に破壊されたという。この後も、何か騒ぎがある度にソ連時代の記録が消滅して行った。

ゴルバチョフに代わったエリツィンも元KGB局員だったという。エリツィンはウオッカを飲みながら大統領になり、大統領になってもウオッカを飲み続けた。ゴルバチョフ時代から引き続き、ロシアは混乱の中にあった。

ゴルバチョフ時代に、KGBの資金が中国国境を超えて持ち出されたという。KGBは自らが演出した混乱を最大限に利用し、ロシアを手中に収めて行った。


第二次大戦前、ソ連はドイツと近い関係にあり、ドイツ軍は秘密裏にソ連領内で軍事訓練をしていたという。ここからは憶測だが、ソ連とドイツの軍人に密接な交流があったとしても不思議ではない。ソ連軍の中にドイツ派の軍人も多かったと思われる。独ソ戦が始まった後、スターリンがこのドイツ派の粛清を行った可能性がある。ソルジェニーツィンがシベリア送りになったのは、ドイツ派の疑いをかけられたからかもしれない。この監視、粛清を通じて、KGBはスターリンの信頼を確立し、ソ連軍の上に立ったようにも思われる。

ソ連崩壊の混乱の時代に、自在に軍隊を使って事件を演出し、大統領を次々と取り替え、2人をおいた後、本命のプーチンが出た。本当のKGB=FSBの時代の始まりだった。

プーチン時代、まずマフィアに手がつけられた。ソ連時代、地下に潜っていたマフィアは、ゴルバチョフ時代から表面的には企業経営者となった。力で地方を支配していたマフィアが金持ちになり、富豪として会社を経営しているふりをした。これがオルガルキだった。

プーチンの時代になり、彼らはFSBの指揮下に入る事を迫られた。拒否した者は殺害されるか、国外逃亡を余儀なくされた。国外逃亡した者も多くが暗殺されている。マフィアのフロント企業経営陣に次々とFSBの天下りが収まった。表のプーチン政権が、裏社会も支配する事となった。

ちなみに、この表も裏も支配するやり方は中国も一緒で、伝統的裏社会である幇にあって、中国共産党は最大最強の幇として君臨している。台湾の国民党も孫文の時代、つまり最初から幇だったが、共産党の風下に立つ事となった。蔡英文が現れる直前の台湾が、あわや中国に飲み込まれるという所まで行ってしまったのには、そうした理由もあった。

プーチン政権はヨーロッパにガスを供給しているが、その他、武器輸出はアメリカについで世界第2位である。これは国家間取引の部分で、これは合法。他に犯罪組織の密輸があり、ロシア・マフィアからイタリアの犯罪組織、そして、アフリカへの密輸といった経路もある。これは非合法だ。

かつては、パレスチナのPLOに武器を卸し、PLOがヨーロッパのテロ組織に売るといった販路もあった。今はイラン経由でシリアやヒズボラに、そして、ハマスにといった流れになっている。第二次大戦で、英米がソ連支援で武器を送ったのはイランからだったが、それが逆向きになった格好だ。

この他、キューバ経由で南米に武器が流れている。中南米では、左翼ゲリラが麻薬カルテルと一体化しているが、これが武器市場として大きい。

南米では、キューバ、ニカラグア、ベネズエラが社会主義国としてつながっている。この3国は、政府に反対する国民を協力して殺しあっている。キューバの情報機関は国民監視技術をこのコラボレーションに投入している。また、ソ連製の武器もキューバ経由で入っている。ベネズエラは新型カラシニコフ小銃のOEM製造国でもある。

武器と麻薬、人身売買はつながっているが、南米でも事情は同じで、南米のこうした密輸密売ネットワークはロシアと無関係ではない。

ソ連崩壊の時、ソ連圏だった東欧諸国の政権も次々と崩壊した。この時、KGB=FSBは東欧諸国の情報機関に生き残るための策と展望を指導した様子がある。東欧諸国の情報機関はソ連圏崩壊を生き延びて犯罪組織となり、捲土重来を期した。

ロシアン・マフィアのビジネス交渉がうまく行かない場合、あるいはビジネスを独占したいが、先にいる組織が強くマフィアでは対応できない場合、ロシア軍が出てきて邪魔者を皆殺しにし、市場をロシアのものにする。ロシアと戦っていたチェチェン軍は戦費を稼がせるために地域のロシアン・マフィアを皆殺しにし、チェチェン・マフィアに麻薬ビジネスをさせていた。ロシアや東欧もやっている事は同じだ。

ロシアン・マフィアと言えば売春が有名だが、これもFSBがマフィアにやらせている商売だ。ソ連時代、共産主義だから女性は高い教育を受けていた。そして職業を持てた。仕事はお針子しかなく、みんな軍服を縫っていた。崩壊後はお針子の職すらなく、売春に身をやつすしかなくなった。プーチンが愛人名義でタックスヘイブンに溜め込んだ金の一部も、女たちから吸い上げた金だろう。ご立派な事だ。

プーチンのロシアは、チェチェンの独立派に対して終始強硬路線をとり、独立を退けた。

力と強硬姿勢、そして、FSBを使った謀略と情報工作、マッチョさと腹黒さがプーチンの特徴だろう。

ロシアは一貫して軍備を増強し、世界中に武器を売り込み、ウクライナに侵攻してクリミア半島を占領し、シリアで独裁者アサドを支援し、内戦では爆撃で多数の非戦闘員を殺している。

また、ロシアは中国と共にイランを支援しており、そのため、イランは核開発を推進して来た。おそらく、核兵器を持つ寸前だろう。


ロシアと中国は、世界の安定に敵対し、自分たちの影響力を強化しようとしている。マフィアと黒社会と独裁者が一体となり、ハイブリッド戦によって平和を脅かす世界が現出してしまった。彼らの支配は不正と暴力によるものだ。愚かな者たちは、ロシアや中国の力や金に目がくらみ、横暴な態度に惹きつけられるだろう。

だが、私たちはこれを容認する事は出来ない。彼らの作り出している格差、差別、不平等もまた悪化の一途をたどっており、内政問題も山積している。彼らにこれらの問題を解決する能力も、解決するつもりもない。

プーチンは粗野な冗談を言いながら、平然と残虐行為をやってのけている。計算づくの事だろう。豪放を演出している。あの下品さも演出だ。それがある種の者たちを惹き付けるのを知っての作為だ。

国民を幸せにする事も、国を良くする事も考えず、軍事力と権力の強大化だけが国家への貢献だと心得ているらしいプーチンだが、それは彼にもあった若い時代にコムソモールででも学んだ事なのだろう。

スターリンが日露戦争に負けたのを恨んでいたように、プーチンも腹では日本を叩きたがっている感じがある。気にしておいた方がいいだろうと思う。