2021年6月19日土曜日

トマス・ペインとボブ・ディラン

 ほとんど聞かないんですが、ボブ・ディランという歌手の「I shall be released」という、けっこうみんなが好きな曲のサビに、


I see my light come shinin'

From the west down to the east

Any day now, any day now

I shall be released


ええと、駄訳+わりと誤訳すると、


私は西から東に輝き訪れる我が光を見る

その日は今、その日は今

私は解放される


という感じになると思います。

("Any day"を「その日」としましたが、「約束の日」とかでも良いかもしれません。あるいは「今こそ、今こそ、私は自由になる」というぐらいでもいいように感じます。最後の"I shall be released"は"shall"と言ってるので、かなり強い感じになります。日本軍にフィリピンから追い出されたダグラス・マッカーサーが脱出の時に"I shall return"と言ったのは有名な言葉です。それほど強い決意を表してます)

それで、この「西から東に」というのがわからなくていたんです。光だから太陽かなと、最初は思ったんですが、そうすると変です。太陽は東から登って西に沈みます。南半球でもそこは同じです。そこでわからなくなったんですが、そのままにしてありました。

20年以上かな、放置でした。

それが、最近読んでいたレオ・シュトラウスの『哲学者マキャヴェッリについて』に

「剣の政府が東から西へ巡ったのに勝る強い推進力をもって、今や西から東へと巡りつつある」

と、トマス・ペインの「人間の権利」の一節が引用されており、そこに「西から東へ」とありました。

ああ、ディランは"I shall be released"を、トマス・ペインに由来させたのかと思った次第です。

ディランは情緒ではなく、法律家のような感覚の、とても強い意志の人ですね。まあ、そうじゃなきゃ、ボブ・ディランという設定を生きるなんて続けられないでしょうね。