2017年8月1日火曜日

ゴルフボール

 荒川の河川敷に都民ゴルフという名のゴルフ場があった。小学生の時、ここでボール拾いをしている子供たちがいた。上級生も同級生もいた。
 池に落ちたゴルフボールを拾うのである。一度だけやらせてもらったが、まったく拾えなかった。それで一度だけになってしまった。
 ズボンを脱ぎ、パンツ一丁になって池に入る。足で池の底を探りボールを見つける。先に針金の輪を付けた棒を水に入れて、ボールを輪っかに乗せ、引き上げる。
 そんな手順でボールを拾って行く。
 慣れた子は次々とボールを拾い、何十個ものボールを、自分の場所に転がしていた。
 ボールはキャディーが買い上げるのだと聞いた。キャディーは客に売っていたのだろう。
 沢山拾っていた子は数万円の札をポケットに入れていた。目端の利く少年だったのだろうと思う。要領の悪い私などは仰ぎ見るような上級生だった。同級生の兄だったが、同級生も怖がってか、あまり声をかけないでいた。
 小学生に何万円も稼がせていたのだから、キャディーはかなりの副収入を得ていただろうと想像できる。しかし、一度きりで一個も拾えなかった身では、その経済システムの成り立ちを知る事などできなかった。

 その後、ゴルフとはまったく縁がない。