2017年8月1日火曜日

small talk : 嘘ニュース

「マスコミがタガを外してしまったのは、脱原発からだと思うんだ」
「ネットでも嘘ニュースが続いているが、マスコミも無知をさらけ出して不安を煽り続けているね」
「脱原発のコアになっているのは、反核運動からの活動家だ。あの馬鹿ども、相手になど出来ないぞ」
「大震災の衝撃と混乱で、あいつらにつけこまれてしまった人が沢山いる」
「左翼と新興宗教が渾然となってデマを撒き散らしたからな」
「新聞もだろ」
「ああ、昔のマンガで言えば「バイオレンス・ジャック」の世界になるみたいな印象操作をしたな」
「脱原発はマンガと現実の区別がついてないってか、しかし古いな、せめて「北斗の拳」とか、映画の「マッド・マックス」にしろよ」
「もう、どれも新しくないだろ」
「原発事故の後は、終末的な事が起きると決めてかかり、探し回った」
「埋まっていたお地蔵さんが姿を現した、オソロシーとやっても同じだ」
「それじゃ川口探検隊だ」
「あれほど面白くはないよ。はるかに下等だ」
「取材を始める時には、すでに企画が通っているし、先入観もある。事実を集めて行って、先入観と突き合わせ、像になって行く。面白いのはそこだ。それが企画とズレてしまう事もありがちだ」
「そんな時、どうするんだ?」
「つまらない企画だから、こっちで行きましょうと持って行くとか、色々だ」
「企画優先という時もある?」
「どうでもいい話だったら、最初から企画に合わせた取材もある。先輩に、ほとんど自分でしゃべって相手に同意させ、それを記事にした人もいた。週刊誌なんて、荒っぽいものだった」
「そういうやり方を重要な問題でもやるようになっているんだな」
「そうだね。もっと昔だったら、トップ屋なんて人たちがいて、色々な人間とつながりがあってネタを取ってきてたという」
「トップ屋ね、何でいなくなったんだい?」
「ネタを使ってゆすりをする人たちがいたからさ。雑誌に持ち込むのは、ゆすりに失敗したネタだったりしてたようだ」
「ブラックだね」
「ブラックだね。昔の記者は凄かったみたいな事言う人は、ゆすりが困るんで、各週刊誌がトップ屋さんたちと縁を切って行ったのを知らないのかね」
「でも、ゆすりが出来るほど凄いネタをつかんで来る力はあったんだね」
「そういう見方も出来るね。普通では取ってこられないネタを取って来るんだから、普通じゃなかったって事だ」
「そういう人たちのネタが面白いのはわかる」
「いわゆるブラックは、情報誌と言われた小さな雑誌を企業総務相手に作っていた人たちという事だと思う」
「怪文書ではないのか?」
「所在を明らかにして怪文書を出したら、即刻訴訟だ。怪文書とは違うよ。ただ、怪文書が情報誌に送りつけられるなんてのは、当然あった」
「怪文書の出回り先でもあったのか」
「ブラック・ジャーナリズムなんて言葉を世に広めたのは「噂の真相」だと思うけど、あれをやってた岡留だって元々はブラックだったのが、喧嘩して飛び出したはずだ。それで、随分とトバシもやってたし、身びいきの嘘も書いてた。革マルとか、ああいうところから情報をもらってもいたようだし、あまり感心できるものではなかったよ」
「訴訟に負けるからって廃刊したんだよな」
「訴訟に耐える質を作れなかったって事だ。情報誌をブラックとかけなしながら、その水準にも行けなかったって話さ」
「費用と労力を考えると、訴訟を起こそうという人がいないっておかげで助かって来たのが、そうはいかなくなった」
「そうだ。せっかく貯金も出来たし、ここらが潮時と判断したんだろ。要領のいい人物だったんだな。それは悪い事じゃないがね。文章も上手かった。ほとんど一人で書いてた。文章を書けない奴もいたからね」
「小才の効いた小者で、面白い所もあったって事だな」
「情報誌は、新聞や雑誌にとっていいネタ元でもあって、情報誌発のスクープなんてのもあったんだぜ」
「スゴイね。それなのに、今はサエないね」
「情報誌がなくなったからさ」
「どうして?」
「警察が潰したんだ。警察が企業を回って、情報誌を購読したらいかんと言って回った」
「どうしてだ? 企業にしてみれば、防衛にも必要な情報収集だろうに」
「総会屋が資金獲得のために出していた情報誌と一緒くたにされたのさ。だから、反社会的勢力への資金提供を封じるという事で情報誌の購読に圧力がかかった」
「収入源をやられたら終わりだな」
「そう。それで情報誌がなくなって行った。情報誌は警察も情報源にしていて、企業には購読を禁止しておいて、自分たちはネタ探しに顔を出したりしていた。コピーまで使って行くと怒っている情報誌の人がいたよ」
「いかにもだな」
「で、情報誌がなくなったせいで、情報の流れが変わり、怪文書が妙に影響力を持ったり、メディアが官僚のリークに依存するようになった」
「中身が薄くなって行く過程を見るようだな」
「そして、マスコミは幼稚になった。今なら、インターネットでの発信を探した方が、よほど発見がある」
「マスコミの人間や、インテリ業の人間のように、党派性や感情に左右されず、論理的に考え、常識的な判断をしているのは、インターネットで発信している人たちの方にいるよ」