ロレッタ・ナポレオニの新刊を待っている話は書いたけれど、もう1人、新刊を待っている人がいる。
フランスのエレーヌ・ブランという人だ。
彼女は「KGB帝国 ロシア・プーチン政権の闇」(翻訳)という本を書いている。フランスの国立科学研究センターの犯罪学・政治学研究員だが、あまり本を書かないのだろうか、日本で読まれていないだけなのか、「KGB帝国」以後、本が出ていない。
ペレストロイカから、ソ連の崩壊まで、作・演出・出演はKGBで、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチンと、すべてKGB出身者だった。プーチンは大統領として、表の権力者になったが、同時に、マフィアを牛耳る事で裏の力も掌握した。
その過程で、古くからのマフィアは国外逃亡するか、軍門に下るか、粛清されるかした。そして、マフィアの上にKGB(現FSB)が君臨した。
ロシアのマフィアは表向き企業の形をとるが、KGB職員がその経営者に収まる。
ロシアのあらゆる権力と富はKGBに集中している。
ブランは、こうした事を丹念に調べ上げている。
ロシアでは、あらゆる活動の証拠が破壊され続けているようなので、その意味でもブランの仕事は基調だ。
フランス語は読めないので、できれば日本語、せめて英語で後の研究を読みたい。
支那の専門家は、「中国も同じだね」と言っていた。支那の黒社会では中共を同列に置いて、共産幇と読んでいるらしい。共産幇が一番強力で悪辣な組織だから、従うしかないのだという。
サイバー犯罪、武器売買、人身売買、麻薬密輸、資金洗浄といった犯罪の影にちらつくのは、ロシア、支那、北朝鮮の姿だ。本書でそこまで話を広げてはいないものの、そうした裏の部分へのつながりまで踏み込んだ研究として、「KGB帝国」の研究は、まだ古びていない。
生きている人の本で、出れば買おうと構えているものは少ない。ブランの新刊は、もう何年も待っている。