2018年1月2日火曜日

small talk:2017年を振り返って

「めずらしく去年一年を振り返ってみた」
「そろそろお迎えが近いか・・・で、どうだった」
「一番感じるところがあったのは内山高志の引退だった」
「ボクシング選手だな」
「そうだ。長い間チャンピオンだったが、先一昨年(2015)、ジェスレル・コラレスというパナマの選手に負け、一昨(2016)年の再戦でも勝てず、去年(2017)に引退した」
「確か、そのコラレスという選手、一度計量に失敗するとか、この体たらくで大丈夫なのかという印象だったな」
「そうだ。だからまさか内山が負けるなんて誰も想定していなかった。内山はボクサーとして最高峰に立っていると誰もが感じていた。それまでの試合内容がずば抜けていたんだよ」
「コラレスとは格が違うと思っていたわけか」
「まさしくそうだ。だから負けた時、何が起きたのか、まったくわからなかった」
「それで、続けて同じ相手と再試合したんだな」
「再試合については、チャンピオンが挑戦者の国に来て試合をしたという点でコラレスは賞賛されていいと思う」
「何だか頼りないだけじゃなくて、いいところもあったわけだな。で、試合は」
「うん・・・コラレスは逃げ回るんだよ。内山がそれを追う。何も知らずに見ていたら、内山がチャンピオンだと思っても不思議ではないという内容だった」
「だが、追い詰めきれなかったのか」
「おそらく、追い詰めたと思った瞬間、相手の術中にはまっているという感じになるような相手だったんだと思う。内山もうかつには飛び込めなかったんだろう」
「逃げているのか誘っているのかわからないわけだ」
「俺たちからすればチャンピオンらしくない戦い方だが、あっさりと否定されてしまったね」
「弱い選手というわけではないんだろ」
「当然だ。今はもうチャンピオンではないが、内山以外にも防衛している」
「だが、横綱相撲ではなく、実を取る戦い方をするわけか」
「そうだ。例えて言えば、内山は最強の正規軍でコラレスは中南米のゲリラだった」
「非対称戦だな。正規軍が苦手とするのが対ゲリラ戦と言われている」
「それだ。内山は、前にも妙な戦い方をするフィリピンの選手相手に手を焼いた」
「聞いていると、本来なら避けるべき相手と戦ってしまったように思えるね。戦略的な過ちだ」
「どうしてもやらなければならないなら、勝てる戦術を取るべきだったという事か」
「ああ、一本調子だったんじゃないのか」
「戦略がなく、戦術的に柔軟性に欠けるというのは日本の問題とされる所だな」
「日本はオペレーション・リサーチでもかなり遅れを取っているからね」
「内山の引退とそういう事がつながっているという事か」
「うーん・・・かつての三矢研究で想定された事態が現実味を帯びて来たんで、話がそう流れたとも言えるし、どうかはわからないが、考えてみても無駄ではない所だとは言えそうだ」
「ともかく、大晦日に内山の試合がないというのは寂しいものだったよ。超一流の選手の引き締まった試合で一年を締めくくるのはいいものだった」