2019年3月11日月曜日

少年小説の至福

山本周五郎の少年小説を何冊か読んだ。「ミイラ」とか「毒矢」とか、魅力的な表題ばかりなので手が出た次第だ。
その中で周五郎先生、凄いなと舌を巻かざるを得ない描写があった。
いや、何ね、シャーロック・ホームズが出て来るんだけど、ホームズにコーヒーをすすらせちゃうのであるよ。
英国人のホームズが、紅茶だろうがコーヒだろうが、すするわけがない。それを周五郎先生、日本にあわせて、すすらせちゃってる。
何て大胆な筆だろう。ホームズともなれば、日本に来たら日本人化したに決まっているから、先生はわざわざそんな事に紙幅を費やさない。周五郎ホームズは、きっとふんどしを着用に及んでいると、そこまで行間を読まねばならない気持ちにさせられる。うむ。

江戸川乱歩の上品な少年小説群も面白いが、山本周五郎作品のような痛快な世界も心躍る。
少年小説の至福というものはある。