2020年7月6日月曜日

イエイツってまだまだ読める人だ

今更ながらフランセス・イエイツの『記憶術』を読んだ。
ラモン・ルルやジョルダーノ・ブルーノに触れる部分は迫力があって楽しかった。
古代から、西洋の転換点のルネサンスまでの信仰、思想哲学、文芸をつなぐ線として記憶術を見て行く手際は、いつもながら脅威的だ。

記憶術はギリシア起源とされるが、ギリシア起源とされるものの多くがエジプト起源だったり、ユダヤ起源だったりする。そして、エジプト起源とされるものの多くが、インド、中国起源だったりするんで、その辺りどうかなと考えてみた。

アヴィ・ワールブルクが「異教的ルネサンス」に収録されている講演記録で触れている占星術の起源の中でインドが出て来る。占星術は、ブルーノ(だけではないが)が記憶術と結びつける重要な宇宙観だ。ワールブルクが、イエイツがブルーノに見た記憶術に関係するものとして占星術を意識したとは思わないが、インド諸学がエジプトに伝搬し、ギリシアに渡り、時を超えてルネサンスに影響したという風にはとらえていたと見て間違いはないと思う。

その頃のインドというとバラモン教の文明になるのだろうか、占星術や記憶術が仏教に入ったかどうかはわからないが、密教には占星術も記憶術もある。

空海は洞窟に籠り「虚空蔵求聞持法」の真言を修行し、星が口に入って成就したとされる。この「虚空蔵求聞持法」は記憶術のようだが、この修業で星が口に入るなんて、記憶術と占星術の一体化そのものだ。空海とブルーノか・・・素人は証拠も調査も文献もなしに勝手な想像を膨らませる事が出来ていい。

ルネサンスまでは、記憶術は印象的なイメージを使って記憶力をかきたてたのに、その後は面白かったり、奇妙だったりするイメージの使用を禁じるものとなった。人文主義者の教育思想のせいだ。そして、記憶術は衰退するのだそうだ。

イエイツは微積分のライプニッツのカバラ主義に触れた所で筆を置く。
おそらく、ライプニッツをカバラなどと関連させるといった事を嫌がる人は少なくないだろう。イエイツ女史も人を嫌がらせるのが上手い。