戦争よりも平和の方がいいに決まっている。
それでも、その後に、だが、と付け加えざるを得ない。
平和を主義とした後の硬直に陥らないようにするには、そうするしかないからだ。
平和主義に凝り固まった実例が日本だ。
南北会談後の今、ちょっと前の危機が過ぎ去ったかのような雰囲気作りがなされているが、今後の事はさておいて、ちょっと前の危機に向き合う必要がある。
野党が危機をさておいて、延々と取り上げたにもかかわらず、何も出なかったのだから、何もない事が明らかになったのに、いつまでも森加計問題で騒いでいた時期に、北朝鮮は核実験とミサイル発射を繰り返していた。
もちろん、これは軍事的威嚇であり、場合によっては攻撃に転じるとチラつかせていたのである。
だが、日本はこうした事態に対する法整備が行われていないため、北朝鮮による日本侵攻が現実のものとなっても、ロクな防衛が出来ないのは明らかだった。
それでも、左翼系がかなり力を持っている野党は、明らかな事は見えず、理解できないのか、森加計にかかりっきりだった。
彼らは平和を主義としているため、平和以外、つまり、戦争は可能性を考える事すら戒律に反する罪だとと思っているらしく、戦争の危機を無視して、森加計に熱中していた。その姿は愚かだったが、あの愚かさは平和主義の本質的な問題点が分泌する愚かさだった。
ここで、平和は良く、戦争は悪いという始まりに戻ろう。この後、だが、と続けねばならないのである。
だが、この、おそらく誰もが認めざるを得ない事に落とし穴がある。
戦争には相手が必要だ。だが、平和に相手は必要ない。そこで、安易な平和主義の人は相手が見えなくなってしまうのかもしれない。
相手が戦争を目論んでいる場合、平和は一方的な願望以外のものではない。そして、その場合、戦争も一方的に行われる事になる。戦争を戦火を交えるもの、戦闘を行うものと、狭義にとらえるのではなく、総合的に広義のものととらえた場合、情報戦、政治戦などが一方的に行われる。
自民党で、北朝鮮の代理人ではないかと噂のある政治家がいた事がある。大きな資金力と勢力を持った人物だったが、失脚したのは、アメリカからの情報提供があったためと言われている。
冷戦時代、欧州に侵攻しようと圧力を高めていたロシアは、バーダー・マインホフ集団、赤い旅団などの欧州域内の左翼過激派を使ってテロをやらせた。中東で軍事訓練を受け、武器を提供された彼らの行った陰惨なテロ活動が活発だった時期を、鉛の時代と呼ぶ。背後にいたソビエト・ロシアは、テロ組織に情報を与え、武器を売りながら西欧に社会的不安を醸成しようと目論んだのである。
当時のテロ集団は、ベトナム反戦運動を通じて過激派テロ集団を形成した。平和運動がテロに転化し、そのテロは戦争の予備行動として行われていた。平和を願う気持ちが、主義となった場合、戦争を呼び込む事になってしまった。この苦々しい事実を、平和を主義とする人々は無視し、忘れ去ろうとしただけだった。
当時の西欧は、今の日本よりもはるかに国防意識が高く、また、法整備、軍備なども行っていたが、その軍事力は超軍事大国ソビエト・ロシアに比べるべくもなかった。日本は、非常に危ない状態にある。万が一、今回の半島危機が何事もなく終わるとしても、出来るだけ早く、次の危機に備えねばならない。
戦争は悪だ。だが、悪をなしてでも欲望を遂げようとする者はいる。人間は、まだそのような下等な面も持っている。一国の富と権力を一族で独占し、暴力と監視で国民を統制する者は、悪に染まっている。これは北朝鮮の金一族の事だが、彼らが善良に平和を求め、努力すると考える方がおかしい。
今、怖いアメリカが怒っており、制裁が厳しくなっているから、おとなしくなっているに過ぎない。専制軍事国家という悪を改める気持ちはさらさらない。それどころか、これを推し進め、韓国はもちろん、機会を見て日本も脅しあげ、支配下に置こうとしている。
北朝鮮の背後には、ロシア、支那がいる。
ロシアは、シリア、イランとコラボレートしつつ、欧米の制裁など無視して、力を拡大させようとしている。資源を持つロシアは、ガス供給でEUの生命線を握っている。
支那は、嘘で固めた経済のメッキがはげないうちに一帯一路をしゃにむに推進している。支那の経済力の裏側には軍事力が張り付いている。
ロシアと支那は、中東への大きな影響力を持つに至っているが、今は、ユーラシア大陸の覇権に王手をかけようとしている。
ロシアも支那も、世界への軍事的脅威となって来ている。
今、平和主義の蒙昧に足を取られてはならない。
どのような戦争も悪であり、いい戦争などない。だが、そのように戦争が否定されるためには、厳しい条件が満たされる必要がある。誰も戦争を起こせなくならなければ、戦争はなくならない。いかなる理想が成就すれば、その条件が満たされるのかすら、いまだにわからない。
人間はかなり上等な所もあるが、愚劣でどうしようもない面もある。人間がこのようである間は、戦争がなくなる事はないかもしれない。
今はただ、否応なく、戦争があるかもしれない事を前提に、平和の努力を怠らずに続けると同時に、軍備を整える事の両面をしていかなくてはならないのだろう。