2018年5月7日月曜日

気狂い帽子屋もウサギもいない。普通の国のある業界

 昔々、昭和という時代がありました。30年頃から民謡が流行しました。
 民謡人口が一挙に増えました。レコードも吹き込みも多くなりました。
 そこで、レコード会社は楽をしようと考え、吹き込んだ歌手にレコードを買い取らせるようになりました。
 民謡の流行は終わりました。
 戦後の流行歌の流れは、昭和20年代に進駐軍の慰問から始まりました。「進駐軍回り」をやっていた歌手や演奏屋さんが流行歌の市場に出てきました。ジャズやポップス、カントリーなどです。その中にロカビリーもありました。
 渡辺プロダクションの渡辺普、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川、キョードーの永島達司なんかが「進駐軍回り」の仕込みをやっていたはずです。他にもいたと思いますが、詳しくありません。
 そういうポップス系の流れはGSブームで頂点を迎えます。
 それとは別に民謡ブームがあったわけです。
 河内音頭の鉄砲光三郎が流行させた鉄砲節なんかも、民謡ブームから出たのだと思ってましたが、ちょっと違うかもしれません。
 映画「悪名」シリーズに、鉄砲光三郎が出演している作品があります。主人公は河内の人間ですから、河内音頭が出てきて当然です。いい映画でした。
 GSブームの後、フォークソングと演歌が歌謡界を席捲します。
 昭和の頃にはテレビで歌謡番組やヒットチャート番組もありました。
 ポップス系の音楽がそこで巻き返して行くのですが、その時に、あるやり手の人がヒット曲番組に出るためにどれくらいレコードが売れればいいか調べ、買い取ってしまいました。ヒットを作ったのです。
 買い取ったレコードは、コンサートで売ります。テレビでファンになったけれど、まだレコードを持っていない人に売ります。定価で買ったレコードを定価で売るのですから、倉庫代や手間などを考えると赤字ですが、丸々赤字になるよりはいいでしょうし、タレントが売れれば、トータルは黒字になります。
 この方式はすぐに一般化しました。そして、当然、ヒットチャートは壊れました。もちろん、ヒット曲番組も消滅しました。
 よく、ネット配信になってCDが売れなくなったと、業界の人がグチを言ってますが、ただの泣き言、グチです。
 買い取りでありもしない人気をでっち上げたために、本当に多くの人に愛される歌が行方不明になってしまったのです。市場は縮小してしまいました。
 それで、この話は民謡のレコードを演者に買い取らせたところから始まります。
 レコード会社は、楽をしようとして、最後は泣かねばならない境遇になってしまいましたとさ。