2018年5月30日水曜日

最近、SFをよく観る

 酒鬼薔薇の話から、変質者の話になり、変態は嫌だねと転がったところで、山上たつひこの漫画『がきデカ』を思い出した。小学生を変態にして、それが主人公だったんだから山上たつひこ、最初はヤケクソだったんじゃないかと思う。で、それが小学生にウケて、まあ、小学生はそういうものだから・・・大ヒットした。

 山上たつひこは、関西の人じゃないかと思うが、元々は陰鬱なSF漫画を描いていた。飛び抜けて絵の上手い人で、最初に見た時に印象に残った。おそらく貸本系の版元で出した、色々な人の作品集になっている平綴じの漫画本で読んだ。
 そのうち、『COM』に連載をはじめたが、すぐに頓挫し、それから「少年マガジン」で『光る風』を描きと、やはり暗いSFを描き続けてると思ったら、突然、『コミック・ギャング』という雑誌だったように記憶している、『喜劇新思想体系』というギャグ漫画を描き始めた。その頃は周囲に知っている人がいなくて、一人で読んでいた。『喜劇新思想体系』が見直されるようになったのも、『がきデカ』のヒットの後だ。
『がきデカ』は、確か「少年チャンピオン」連載で、最初は調子が出なくて、3回目だったろうか、父兄参観の回で変態が爆発し、以後、大ヒットの道を歩んだ。

 あの漫画は、少年マガジンでは不可能だったろう。少年チャンピオンでしかありえなかった。
 練馬変態クラブ、八丈島のキョン、栃の嵐と、面白いキャラが色々と出て来たのを覚えているが、段々と漫画を読まなくなって、終わりの方は知らない。

 最近のコミックス原作のアメリカの映画やドラマを観ると、みんな暗くて、山上氏の若い頃の作品は『ヘビーメタル』の先行作品ぐらいには行ってたと思う。随分と先を走っていた。手塚治虫の明るい未来が、少し暗くな所も出て来はじめた頃に、どん詰まりのSFを描いてたんだからね。

 そう、最初に読んだのは、ロボットが看守の刑務所から脱走してみたら、外の人類は絶滅してて、結局、刑務所に戻るしかなくなってたという作品だった。
 ありがちな展開だなとも思ったが、印象に残ったのは確かだった。
『マトリックス』は、かなり陳腐な設定を真正面から映像化する力技で押し切ったが、あの頃の山上たつひこなら、裏切り者を主人公にして絶望的に終わったと思う。
 でも、CGだけで、中身は予定調和の『マトリックス』の方が、本質的にはニヒリズムで、強迫観念と言えるかもしれない絶望に取りつかれた山上マンガの方がニヒリズムではない分だけ健康的だと思う。ありがちではあったが、少なくとも陳腐な予定調和ではなかった。